SOIL&RAIN BIOSHOPルック① SOIL&RAIN BIOSHOPルック②

20年間向き合ってきたオーガニックコットンを、自らカタチに

今でこそようやく認知が広がってきた「オーガニックコットン」。実は、20年以上も前からずっと向き合ってきた国内のパイオニア的企業がある。パノコトレーディングだ。 オーガニックの原綿、原糸を輸入して国内で生地を作り、アパレルメーカーなどへと販売してきた。4年前、オーガニックコットンの事業が20年を迎えようとするタイミングで、次のステージに行こうという雰囲気が自然と醸成され、自らのテキスタイルをつかったブランドを立ち上げようという話が持ち上がった。 ブランド名は、「SOIL&RAIN BIOSHOP」。「良いものは良い土壌から生まれる」というコンセプトを立て、オーガニックコットンを生む自然と大地をイメージした。企画・デザインを担当する三保さんと長尾さんを中心に、テキスタイルメーカー発ブランド立ち上げの挑戦が始まった。

ブランドの立上げ、そしてウィメンズラインへ

当初は、メンズやインナー、バッグなど、いわゆる”ファッション”よりも”プロダクト”に近いものづくりから始めた。しかし、ブランドを始めて2年程経った頃、次のステージへと進むため、やはり一番ニーズの強いウィメンズアパレルへの挑戦を決意した。 ただ、それらのアイテムの量産をするにあたって付き合いのある縫製工場はなかった。OEM会社に無理を言って依頼してもいたが、ロットが少ないため納期が安定せず、コストもかさんでしまった。 そんな時に業界紙で目にして気になっていたシタテルを思い出した。背景に光を当てたプロダクトを生み出していきたいという点では、「MADE IN JAPAN」 にも興味があった。 「日本産の商品の流通量が3%を切る状況を見るにつけ、国内の工場に仕事をお願いすることの意味も私たちなりに考えていかなければいけないと感じていました」。 OEMで難しいと断られ、ドロップしてしまったアイテムから、最初の生産がスタート。以来、ドレス、アウター、スカートなど、シーズンごとに様々なアイテムの生産でタッグを組んだ。

SOIL&RAIN BIOSHOPルック③ SOIL&RAIN BIOSHOPルック④

生地そのものの魅力を最大限に引き出す服づくり

テキスタイルメーカーとしての強みは、やはり最高品質の生地。綿を作る畑からのこだわりを、ひとつひとつの服に落とし込む。 「生地の特性を活かすということは、ブランドとしてとても大事にしていますね。この生地はどういう形になるのが理想的なのかという視点は、デザインする上で高い比重を占めています」。 軽い、光沢がある、肌触りがとても良い、落ち感が出るなど、様々な特徴の生地がある。縫製工場はその生地を、二人三脚で服にしていく、いわば”パートナー”だ。 例えば、定番の型になっているスクエアビッグドレスは、広げると一枚の四角い布からできており、普通のワンピースとは作り方が異なる。生地の落ち感を活かして、ドレープの陰影や品の良い光沢が自然に出るような形にした。生地にこだわりがあるからこそ、技術の高い縫製が必要とされる。 「SOIL&RAIN BIOSHOP」企画・デザイン担当三保さん

まだ答えのない分野を切り開いていく

三保さんは、「SOIL&RAIN BIOSHOP」を、”オーガニック”と”ファッション”の間に位置するようなブランドにしていきたいと語る。 「オーガニックコットンを使用した洗練された製品はまだまだ少ない。一方ファッションの分野ではエシカルという視点が欠けがちです。現状はマーケットが未成熟だとはいえ、潜在的には「美しくエシカルな衣服」のニーズは十分にあると考えています。長年オーガニックに携わってきた知見を活かして、まだ誰も具現化できていないこのフィールドで存在感を示していきたい」。 パノコトレーディングの歩みと共に、オーガニックコットンを使うブランドや商品は増えてきた。消費者の認知や興味も、確実に高まってきている。それでも、まだ取り扱うショップや手に取る人はそう多くはない。 「マーケットを醸成していくという意味では、点ではなく面で盛り上げていくことも大切だと感じています。同じ志を持ったブランドや異業種との交流も深めながら、新しい発信の仕方をデザインしていきたい。また、ブランドとしては4年が経過し、次のフェーズに進むための準備を進めています。我々のスタンスだからこそできることをしっかりと見定め、さらに強みを深化させていきたい」。 テキスタイルメーカー発ブランドの挑戦はこれからも続いていく。