DAIKEI MILLS中村氏

「DAIKEI MILLS」代表の中村圭佑氏

運動で形成される別人格

―中村さんはどのような運動をされていますか?

中村:ランニングもしますし、それ以上にテニスをやっています。週1回か2回、西東京の昭島まで行って、テニスのチームに入って練習をしています。

―運動を始めたきっかけや、遍歴を教えてください。

中村:小さい頃から運動するのが好きで、ずっとやっていました。学生時代はバレーボールをやっていましたが、20代の頃に仕事に熱中するために1回断絶しました。
ただ20代後半、30代前半ぐらいで、頭と体が分離し始める感覚を持ったタイミングがあって。リフレッシュできないというか、筋肉に悪いものが蓄積している感覚がありました。発散方法は色々試しましたが限界があって、やっぱり運動が良いなと思って再開しました。
運動すると普段の生活から離れた違う世界に没入できて、別人格を形成している感覚があります。そういった意味でも、運動で頭をリフレッシュすることができると改めて感じましたね。

DAIKEI MILLS中村氏2

様々なインスピレーション源が並ぶラックにはテニスボールも飾られている

貪欲になれるための場

―運動することでお仕事に影響があったと感じますか?

中村:運動で別人格を形成することで自分の中でのバランスをとっているところがあると思います。
僕はもう6年ぐらい昭島にテニスで通っているんですが、そこで出会う人間はふだんの生活や仕事で会う人間とタイプが違う、まったく別のコミュニティです。僕の業界での立ち位置や仕事の成果なんかは何の意味もない世界です。
テニスが上手い人の方が立ち位置がやっぱり高く、僕は別にそこまで上手なわけではないので、学んでいく姿勢が求められます。ある意味、貪欲になれるんです。
「DAIKEI MILLS」を立ち上げて10年くらいですが、建築業界の中でも意義深い仕事をさせてもらっているし、人から怒られるような状況も少なくなってきている。
でも怒られることで成長していける面もあるので、そういう場所に行きたいという気持ちがありますね。それがテニスなのかもしれません。

―メンタル的に運動がもたらす影響は大きいでしょうか。

中村:メンタルへの影響は大きいですね。それに紐づいて、体の維持もできる。どんなに忙しくて睡眠をとっていなかったとしても、朝の1歩目が軽快に踏み出せる。それは全然違いますね。

DAIKEI MILLS中村氏のテニスプレイ写真

テニスに打ち込む中村氏

運動で得られるアイデアの質と、プラスアルファの情報

―運動する、しないで生まれるアイデアの質に差は出ると思いますか?

中村:明らかに出ると思います。やっぱり頭をどれだけリフレッシュさせておけるかが重要じゃないですか。僕の仕事はインプットして、仕事としてアウトプットしていくという循環ですが、最近、インプットの情報量があまりにも多い。デジタルも含め情報を得るスピードも早いので、ある種アナログな状態に頭を転換して、フレッシュな状態で仕事に向かうという意味で、絶対に差は出ると思います。

―運動を絶っていた時期から確実に差が出ているのでしょうか。

中村:そう思います。運動を断絶していた時期は、1週間の中にオンオフもなく、どっぷり仕事に浸かっている方がいいものができると思っていました。でもそうじゃないんですよね。
運動するとある程度生活のルーティンもできるじゃないですか。それもすごく重要ですよね。

―テニスとは違う運動、例えばジムに通う場合でも同じ効果が得られると思いますか。

中村:出張で地方や海外に行くと、ホテルのジムを使ったり、ホテルの周りを走ったりというのはやっていますね。別の運動をしたときにも同じ効果はおそらくあると思います。
知らない町に行ってランニングするのは、ある意味その町を知るという意味で、プラスアルファの部分もありますね。特に海外ならローカルな感覚を持ち込める。ジムの利用も同じです。「接合点」というか、町と自分との接点を作ってくれるものだと思います。

中村:さらには走るだけではなく、可能なら出張先でもテニスをします。テニスのボレーってあるじゃないですか。その教え方って国によって違うんです。日本は「腕を固定して体を前に動かしてボールを運ぶ」みたいに教わるんですが、ハワイで教わったときは「蝶々をつかむように優しくボールを触る」でした。こんな風に、自分の頭と体をリフレッシュするだけでなく、文化を知ることができるわけです。
机の上でアイデアが生まれる人もいると思いますが、僕の場合は、敏感にいろんな情報をキャッチして、いざというときに咀嚼して吐き出せるかどうかを大事にしています。そのカギは日常生活にありますから、運動を通じて知らない文化を知ることが生きてくると思っています。

DAIKEI MILLS テニスボール

アイデアを紡ぎ出す「タンス」を透明化する

―様々なアーティストの方が「ひらめき」とか「アイデアが降ってくる」と言いますが、運動でその確率が変わると思いますか?

中村:僕は確実に変わる方ですね。100パーセントに近いほど。
ただ僕の場合はアイデアが降ってくることはないので、紡ぎ出さなければいけない。お題を与えられて、日々考えていることから瞬時に反応する。
タンスで想像すると分かりやすいと思いますが、ストックしすぎていると開きにくいじゃないですか。7割ぐらい情報があって、3割ぐらいはブランクの状態でなければ引き出せない。欲を言えばタンスが透明で中身がすべて見えている状況、『あれはここにしまってるからここを開けよう』という状況を作りたい。運動によって、こういう風に透明化されていく感覚はあります。

―ここまでを通じて、クリエイターは率先して運動した方がいいのかどうか、どうお考えですか。

中村:自己完結型でものを作るのであれば、運動しなくても大丈夫かもしれません。ただ、昔であれば山奥に籠って作品を作り、誰かがそれをピックアップしてくれて生活が成り立つような流れが成立しましたが、今はなかなか難しい。
セルフブランディングを含めて、長期的に物事を生み出したり、クライアントワークでいろいろな人と関わる仕事をしていたりするクリエイターは運動した方がいいと思います。

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