Perfume closet ファッショントラック

「Perfume Closet」ではファッショントラックによる移動店舗も展開されていた。トラックはタカラトミーとのコラボレーションでミニカーが作られ、商品化された。

「Perfumeが作る意味」を求めて、メンバー3人がすべてに携わる

―「Perfume Closet」というプロジェクトのコンセプトは、どのように生まれたのでしょうか?

2015年に伊勢丹さんとのコラボレーションで、メンバー監修の「Perfumeダンスヒール」を発売したのが、もともとのきっかけです。その後、Perfumeのメンバーもファッションがとても好きということもあり、洋服を作っていこうかという話になりました。とはいえ、単に作るのではなく、“Perfumeが作る意味”をきちんと持たせなければいけない。そこで、Perfumeがパフォーマンスをする際の衣装の特徴的な要素を、日常着に落とし込むアイデアが生まれました。ファンの方には日常の中にPerfumeを感じていただけるし、また洋服をきっかけにPerfumeに興味を持っていただく機会になればとも思っています。

ダンスヒール

プロジェクト始動のきっかけとなったダンスヒールは、その後も「Perfume Closet」内で繰り返し制作されている。

―プロジェクトとしてはPerfumeのライブグッズ等とも異なり、また独立したアパレルブランドとも違う立ち位置ですよね。

ライブグッズは、いわばそのライブをお客さんと一緒に盛り上げるツールの一つなので、どなたでも買いやすい価格帯、かつライブに間に合うよう作る必要があります。Perfume Closetの場合、価格帯に制限が少ないので使える素材の選択肢も多くなりますし、複雑な仕様やデザインを採り入れられる。それが結果的に、商品の性質に反映していると思います。また、通常のアパレルブランドですと年に4回コレクションがあり、ある程度決まった数をシーズンごとに出さなければいけないといった制約がありますが、このプロジェクトではPerfume Closetとして世に出す意味のあるものが作れたときに発表する感覚ですね。なので、通常のアパレルブランド事業とも大きく異なると思います。Perfumeの活動タイミングに合わせて、「この時期にこのアイテムが出せたらいいよね」という大枠はありますが、商品の完成度が見合わなければ販売開始時期を変更したり、販売自体を見送ることもあります。

 

―Perfumeのメンバーはどのようなプロセスで制作に携わるのでしょうか?

いわゆるアパレルブランドのディレクターさんがされているようなことは、基本的にすべてやっています。新しいコレクションやアイテムを発表する際には、企画スタートの段階からメンバー3人と一緒にコンセプト等を話し合い、そのアイデアを絵型などに落とし込んだ段階でさらに変更点を打ち合わせます。素材選定もある程度はこちらが候補を提案しますが、納得するものが見つかるまで何回も探し直していますね。実際にサンプルが上がってきてからのサンプルチェックもメンバーが直接3~4回は行なっていて、サンプルチェックの回数自体が、通常のアパレルブランドより多いんじゃないかというくらい。おそらく皆さんが思っている以上に、メンバーがPerfume Closetに注いでいる時間は多いはずです。Perfumeの愛がそれだけ大きいんですよね。

“動き”を意識したフィッティング、日常着としてのクオリティを追求

―Perfume Closetのアイテムには、Perfumeの衣装からインスパイアされたものが多く存在します。衣装のエッセンスを日常で着られるアパレルに落とし込む上で、どのようなことが重要でしょうか?

メンバー本人がライブやMVで着る衣装はいわばオートクチュールで、またパフォーマンスに耐えうることが大事ですから、既製服とは作り方も大幅に違います。Perfume Closetの製品の場合はある程度の数量を安定して作れることや、洗濯など日常的なケアのしやすさを前提とするため、求められるクオリティの方向性も衣装とは対極ですね。大切なのは、その衣装がもつ大元の意味やコンセプトから逸脱しないこと。それはPerfumeのメンバーが一番把握している部分なのでご本人たちからしっかりお聞きして、そこから逸れないように作っています。

「Spending all my time」にインスパイアされたドレス

「Spending all my time」MVの衣装をもとに着想されたドレス。メンバーが着用した衣装の要素を繊細に採り入れ、人気アイテムとなった。

特にメンバーの3人がすごくこだわっているのがフィッティングなんです。アパレルのフィッティングでは、着た状態であまり動かずにサイズ感やシルエットを確認することが多いと思うのですが、Perfumeさんの場合は基本的に3人が必ず着た上で動いてみて、所作が美しく見えるどうかなどを細かくチェックされています。動いた時の見え方で生地やカッティング等の変更点が出されるので、衣装からのインスパイアでないアイテムでもどこかしらにPerfumeらしさが表れてくるのではないかと思います。

「Spinning World」からインスパイアされたブラウス

「Spinning World」MV衣装からインスパイアされたブラウス。スリット袖から少し腕が覗くデザイン。

―利用者の意見・要望がフィードバックされることもありますか?

ほとんど毎回、お客様からいただいた意見を打ち合わせで出し合っていますね。私たちはポップアップショップでお客様と直接お話ししますし、Perfumeの皆さんはSNSにいろいろコメントが来るので、新しい企画をスタートする段階で全員が気づいたことやもらった意見をテーブルに上げます。こちらも、いただいた声は包み隠さずメンバーにお伝えしながら、上がってきたアイデアについて「これはPerfume Closetとしてやる意味が見出だせるか」を考えながら詰めていきます。

 

―MV衣装などからのインスパイアでないアイテムも数多く制作されています。“Perfume Closetとしてやる意味”はどのように見出していくのでしょう?

最初に制作したダンスヒールはわかりやすい例で、Perfumeが高いヒールを履いて踊っている姿は一般的な印象としても強いと思うので、Perfumeならではの意味を見出しやすいです。例えばこれが無地のシャツになってくると、いろいろなアパレルブランドでも出されているアイテムですから、Perfumeがやる意味をどう見出すかが問われます。

打ち合わせでメンバーから、どういうパターンにすれば上品で綺麗に見えるか、着心地やお手入れの面でも使い勝手が良いかといった意見が出される中で、メンバーの皆さんにとって「こんな商品があれば私たちも着たい」というレベルまでいければ、Perfume Closetとしてやる意味が見えてきます。あるいは、衣装からインスパイアされたアイテムはデザイン性が強いものが多いので、コーディネートする上でこんな商品があるといいよね、といった切り口の場合もあります。一方で、Perfume Closetとしてリリースする理由を定められない場合は、サンプルまで作ったけれど世に出さずに終わるということも多々あります。

Perfumeの皆さんがすごいのは、自分たちにとっての使い勝手だけでなく、必ずその先にお客様を見ていること。一般のお客様は着づらいんじゃないか」というものは商品化しないですし、サンプルチェックを3回、4回と繰り返す中で、広くお客様が着られるよう微調整をされていますね。

 

―制作する上でファン層の広がりも意識されていますか?

Perfumeのメンバー自身が女性なので、女性向けアイテムが多くはなるのですが、男性向け・女性向けが半々くらいの比率になるように意識しています。年齢層に関しては特に強く意識していることはないのですが、Perfume Closetのプロジェクトがスタートした当時は価格帯のこともあり、30~40代のお客様が大半でした。ただ、最近は大学生くらいの年齢の方々が特別な1枚として買ってくださることも増えてきていますね。

「ポリゴンウェイヴ」にインスパイアされたフーディー

楽曲「ポリゴンウェイヴ」に着想を得たフーディー。作品のイメージに合わせた総チェック柄が採用されている。

プロジェクト始動から5年、その一貫した姿勢とは

―Perfume Closetも5周年、商品も第8弾まで継続的にリリースされてきました。

今年4月にセイコーさんとのコラボレーションで腕時計を発表したんです。腕時計はお客様からもずっと要望をいただいていたので、特別なきっかけがあるときに商品化したいと考えていて、一緒に思い出の時を刻もうという意味で5周年を記念した限定1000本のシリアルナンバー入りで発売しました。ありがたいことに好評で、前回買えなかった方や買えたけれどもう一本ほしいという方も大変多く、12月に腕時計の第2弾をリリースすることになりました。前回と基本的なモデルは踏襲しつつ、デザインを変えています。

SEIKOとコラボの時計

2023年12月には腕時計の第2弾が発売。4月リリースの第1弾モデルをもとに、ガラス面や裏蓋などのデザインに変化を加えている。

―今年リリースされた最新第8弾コレクションでは、楽曲「Puppy Love」からインスパイアされたアパレルも特徴的でした。衣装などからではなく、ライブで長年定番になっている振り付けのフレーズ〈上下上上 下上下下〉が、矢印の総柄で表現されていました。

今年はオフィシャルファンクラブ「P.T.A」も設立15周年を迎えて記念のツアーが開催されるということもあって、わかりやすい衣装インスパイアドだけじゃなく、ファンの中で繋がれるものがあってもいいよねという発想で生まれたものですね。Perfumeのライブに行っていれば何度かは経験しているダンスの振りの掛け声を、柄に仕立てるという切り口です。

puppyloveの総柄ブルゾン

楽曲「Puppy Love」がライブで披露される際に会場を一つにする振り付け〈上下上上 下上下下〉を総柄で表したブルゾン。(※Blouson Inspired by Puppy love-front)

―6年目に入るPerfume Closetですが、この先のビジョンはどのように考えておられますか?

基本的には、あえてのノープランでいたいなと思っています。事業戦略を考え始めるときりがなく、制約が生まれて本来作りたいように作れないというのはおそらくどのブランドさんも感じるジレンマだと思います。ただ、やはりPerfume Closetはアパレルブランドではなく、Perfumeがあってのプロジェクト。Perfumeが出す意味がある商品が作れたときに発表するという姿勢は一貫していますね。

作っている側からすると、日常にPerfumeを感じていただけるのはありがたいことですし、メンバーと同じものを身につけることを、ファンの方々に喜んでいただけていると思います。とはいえ、第8弾までリリースしてきて、100パーセントうまくいったと思えたことはないんです。こうすればもっと喜んでいただけた、もっと多くのお客様に手にとっていただけた、という反省は、Perfumeチーム全体で必ずあります。それを次回の商品で修正し続けて今日に至っているので、常に進化をしなければという感覚は皆が共有している。それはこの先も変わらないと思います。