サステナブルの本質はどこにある?
―サステナブルにはいろいろな定義があると思うのですが、小木さんとしてはどのような視点で見ていますか?
小木:以前、広島でおきた洪水被害によって多くのデニム工場が浸水したじゃないですか。デニムって汚れても格好いいんですよ。だけど、浸水した生地は大きな企業では使ってもらえなかった。そういうところから変えられることがたくさんあると思いました。
―決まりがあって、ダメなものはダメっていう。
小木:そういう考え方もあるんだなと僕はその時思いました。実は自分がアドバイザーとして関わっているお店があって、9月にサステナブルをテーマにしたお店をオープンする予定なんです。やっぱりサステナブルってなるとヨガとかほっこり系にいきすぎちゃうお店が多いと思うんですけど、そことファッションをミックスしたお店になります。
―それはかなり面白そうな取り組みですね。二次流通ビジネスに携わる増汐さんは、サステナブルをどういう定義で捉えていますか。
増汐:定義っていうのは難しいですよね。でも、一枚の服を中心に考えた時、私が着て不要になったとしても世界の誰かは必要としている。そういう人に言語やシステムの壁も乗り越えて当たり前に届けることが出来る。そういう仕組みを作っていくのが私達の役目だと思っています。
―一年2回のシーズンに合わせて作る業界のサイクルをどのように見ていますか?
小木:それはそれで続いてほしいという思いはあるんですが、これがかっこいいという考えを消費者に押し付けてしまっている部分もあると思うんです。消費者に楽しんでもらうやり方はシーズン毎に何かをやるだけじゃなくて、別の方法もあるのかなと。
―それは消費者と直接コミュニケーションを取るしかないですか?
小木:そうですね。海外の方はそういうのを敏感にクイックにやっているような気がします。
―日本と海外で、何が違うんでしょうか。
小木:海外はカルチャーに投資してくれる人は多いですよね。日本だとそれをやることによってどれだけの効果が生まれるのか、みたいな話が先にきちゃうので。じゃあ次のシーズンに考えよっかみたいなパターンで終わっちゃうことが結構多い気がするんです。海外の方が「やっちゃおうぜ!」みたいな感じ。
日本ファッション市場の可能性を拡げるには
―これから洋服の価値を消費者に伝えていくには、どういう接し方や伝え方をすればいいと思いますか?
小木:お店はちゃんとメッセージを発信する場であるべきだと思います。メッセージ性の強い服か思いっきりシンプルで上質な服。AURALEE(オーラリー)のような服を支持する、ちゃんとした目を持つ消費者が日本にはすごく多いんですよ。逆にsacai(サカイ)のようなデザインとメッセージ性が共存する服の付加価値にも共感できて、シンプルで上質なものも受け入れられる。そこが日本のいいところでもあると思うんです。
あとは、海外の人も参加できるのがいいですよね。日本のシステムは海外の人が入りにくいことが多いみたいです。例えば、好きなブランドの会員登録をしたいけど日本の住所がないとできないとか。そこは絶対に改善すべきです。
日本ほどファッションの店がひしめきあっている国はないなと思うんです。そういう良さをもっと世界の人に一緒に参加してもらえるように、ITの方達の力を借りてシステムから変えたい。やっぱりファッションの人たちの頭だけ考えてると限界があると思うんですよね(笑)
増汐:でもIT側からは、ファッション側の人たちがこういうこと考えてるってあんまり分からないじゃないですか。業界的な距離感がものすごくある。小木さんの話を聞くと、できることはたくさんあるんじゃないかと思いました。
小木:海外の人たちは、90年代に裏原宿カルチャーから発信されたファッションに不動産的な価値観を持ち込むやり方を新しい形で広めているんですよね。古い物に新しい価値を吹き込んでその価値を高めた。それを今、ヴァージルや(ディオール・オム アーティスティック・ディレクターの)キム・ジョーンズが世界的に発信していて。本当はRAGTAGとかRINKANがやっていたことだったり、Laila Vintageのブランディングだったりと日本が早かったんですけど、今はアメリカの方がそういうのをビジネスにしてる人が多いと思います。
日本で見れば、LAのRound TwoのSean Wotherspoonのようにセカンドハンドの中からカリスマみたいな人がまだ出てきていないし、アメリカは偽物が多いので、日本の鋭い審美眼がもっと評価されていくと良いのかなと思います。それに、海外ではブランド割り振りがざっくりですが、日本は細かくコレクションの分類までされている。そこも日本の良さの一つだと思いますね。
―たしかに。お二人の話から、二次流通も含めた日本のファッション市場のポテンシャルを感じました。テクノロジーをうまく利用したり、サステナブルがクールだという若い世代のカルチャーをフックアップするのが鍵になりそうですね。
ありがとうございました。