広島・岡山のJAPAN DENIMを世界へ

JAPAN DENIM

(JAPAN DENIM 公式サイト https://www.japandenim.jp/ より)

世界に向けてクオリティの高いデニムを生産する、広島と岡山を中心とした備中備後エリアを産地ブランドとして発信する「JAPAN DENIM PROJECT」。今回、MUVEILやCLANEなどのデザイナーズブランドとデニム工場がタッグを組んでつくったカプセルコレクションが、3月末から4月末まで、GINZA SIXでポップアップを展開している。

広島県福山市にある大江被服は、CINOHとコラボレーションし、セルビッチをデザインとして大胆にあしらったワイドパンツ「HI-WAIST SELVEDGE WIDE PANTS」の縫製を担当した。(冒頭画像)

縫製中のデニム

備中備後エリアは、古くからワークウエアの縫製が盛んで、全国シェアの50%を誇る。また、デニムの染色・加工を行う工場などが多くあり、日本のデニムの80%を生産する一大産地として、世界中のデニムを生産している。

デニムとひとくちに言っても、加工や縫製によって仕上がりは様々だ。児島は比較的デニムならではの荒々しい風合いの仕上がりを得意としているが、福山、特に大江被服では、もともと、カジュアルパンツや中厚地の衣料の縫製を得意としていたので丁寧に縫製した仕上げを得意とする。最近トレンドのラグジュアリーなブラックデニムや女性向けのGジャンなどを手がけることも多い。

裁断中

デニムは加工の工程が多い分、特に分業化されているプロダクトだが、大江被服ではパターン作成から裁断・縫製・検品・出荷までを一貫して担う。裁断を手作業で行う職人や、丸縫いができる技術者をかかえるなど、デニムを中心とした中厚地の縫製に関しては、一流の技術力を誇る。また、リベットやタックボタンをつける型も何百と取り揃えていたり、巻き縫いという特殊技術を習得したスタッフがいるなど、様々なブランドからの細かいオーダーに応えられる体制が整っている。

ステッチミシン

異例のキャリアを経て工場を継ぐ若手社長

2016年には、カジュアルシャツの生産に本格参入するため、第2工場を増設した。現在その社長を務めるのは、代表取締役・大江淳子さんの息子で28歳(2019年4月現在)の大江俊輔さんだ。経済学部卒業後、金融機関に就職、さらに文化服装で専門知識を身に着けて、家業を継ぐ意思を固め、2年前から第2工場のマネージングを担っている。

大江被服の大江俊輔さん

「大学では経済学を学んでいました。アルバイトとして家業の工場を手伝っている中で、アパレル生産業の大変さを感じて、なんとかしたいという気持ちが強くなりました。兄や姉は東京に出てしまっていたこともあり、自分が家業を継いでいきたいと。ある程度決意した上で、まずは社会勉強のために金融機関に新卒入社しました」(大江俊輔さん)

その経験を持っていざ工場で働こうとした矢先、工場長から「文化服装学園でアパレルの知識を学んできてはどうか」という提案をされた。工場としては、跡取りとなる俊輔さんに対して、ある意味で投資をしたいという考えだった。そうして、俊輔さんは文化服装のアパレル技術科に通って縫製の技術を身につけた。

「ありがたかったですね。それまでファッションの世界にほとんど興味がなかったので、学校に行って初めて『うちの工場で作っていた商品はこんな世界的なラグジュアリーブランドの服だったのか』と感動しました。工場アルバイトをしているときは、アパレルに対して大変なイメージしかなかったのですが、ファッションのきらきらしている一面を見れたのが一番良かった。スタートラインが他とは違うからこそ、自分にしかできないことをしていきたいです」(俊輔さん)

ボタン付け

ものづくりの火を途絶えさせないために

俊輔さんが工場を継ぐと聞き、代表の淳子さんが喜んだのは言うまでもない。

「創業者である父も、とても喜びましたね。一度工場をやめてしまうと、ミシンや機械もメンテナンスされずに使えなくなりますから、再スタートはなかなか難しい。実は私も銀行を出て工場を継いでいるのですが、やはりものづくりというのは本当に魅力的。この火は途絶えさせたくないんです。
 初めてラグジュアリーブランドからデニム3000本の生産を受注したとき、俊輔からいろんなアイデアを出してもらって、そのおかげでなんとか出荷までうまくいったということがあったんです。だから、工場で働く人たちからも信頼をされていました」(淳子さん)

俊輔さんは、福山のデニム産地が組織する「繊維産地継承プロジェクト委員会」にも参加している。

大江被服の大江さん

「委員会には残念ながら私のような二代目三代目は他にいませんが、地元に残る若手人材を育てていこうというプロジェクトなので、若手としての意見を取り入れてもらえたらと思って参加しています。ものづくりは、短期間で技術獲得できるわけではないですから、長期スパンで見て種まきしていきたいと思っています」(俊輔さん)

 

【ポップアップ情報】

備中備後ジャパンデニム 
場所:GINZA SIX 4F  ザ・ポップアップ4th 
期間:3月27日(水) ~ 4月30日(火)
日本が世界に誇るデニムの産地、広島県福山市、岡山県井原市を中心とする備中・備後地域。JAPAN DENIMとは、この地域で生産される生地を、高い技術力を持つ縫製・加工技術者と、デザイナーの感性をコラボレーションし、世界に向けて発信するデニムプロジェクト。
https://ginza6.tokyo/news/51703