昨年10月に、社会問題を扱う若者向けのメディア「Be inspired!(ビーインスパイアード)」からリニューアル創刊した「NEUT Magazine」。「Be inspired!」自体は、もともと世界のカルチャーを発信するウェブメディア「HEAPS MAGAZINE」の姉妹メディアとして立ち上がったもので、社会問題に対して、固定観念を打ち破るようなアクションをしている人を取り上げてきた。取り上げられる話題は、例えば「環境問題とファッション」や「政治と音楽」など。 https://www.youtube.com/watch?v=pKDU4eW6oYs&feature=youtu.be 「NEUT」へのリニューアルには、社会問題という枠を越えて、「“Make Extreme Neutral”(エクストリームをニュートラルに)」という想いを込めた。ニュートとは「何にも偏らないさま」を意味する【NEUTRAL/ニュートラル】を省略した造語だ。 「社会問題を考えることがクールだっていう欧米の流れが、2015年くらいから徐々に東京にも浸透してきている気がします。若い世代からしてみれば、もう普通になってきているのかな。NEUTがそんな価値観を集めてコミュニティにしていく役割を担えたら嬉しいです。ただかっこいいだけじゃだめで、ちゃんと自分のことを知っていたり、社会のことを考えているっていうことが、イケてるの一部になってきていると思います」(NEUT 編集長 平山潤 氏) NEUTに登場する人は、世間一般からしてみれば一風変わっているが、自然体で本質的なアクティビストだ。例えば、脇毛を剃らないというポリシーの女性。彼女は、男女がこうあるべきという固定観念に縛られていることに対して、自然体で疑問を呈する。 また、ダンボールから財布を作っている男性は、元々財布を買うお金がなかったからという理由で始めた財布作りが、結果的に環境問題解決のひとつの手段”アップサイクル”として世界から注目をされている。 まだ、他のメディアなどであまり取り上げられていないような人々も多い。どうやって彼らのようなエクストリームな人々を見つけ出すのか。 「実際、飲みの席や友達のイベントなどで偶然話して、この人面白いなって思って、インタビューに繋がることも多い。無名か有名かは関係なくて、既存の枠から出た考えを持ってる人や、本質的に物事に取り組んでいる人を取り上げたいんです。 だからたまたま出会った人と会話して、自分のことを信頼してもらって、自分が相手を信頼して。そうやって相手のことを知ってから取材していくので、時間がかかるけど切り口もNEUTらしいものになるし、相手もNEUTも誇れる記事を作るには、必要なプロセスなのかなって思います」(平山氏) NEUTの強みは、業界や分野を越えたゆるくて強いコミュニティ。それを証明するように、リニューアルイベントとして10月中旬に行われた「NEUT BOWL」には、様々な業界の若者たちが500人以上も集まり、大盛況となった。 「NEUTの強みは、コミュニティと編集力だと思っています。分野を限定していないからこそ、同じ世代の全く違う業界の人たちを合わせる力があると思っていて。HIGH(er) magazine編集長のharu.や、元『WIRED』日本版編集長の若林さんにも登壇してもらったNEUT BOWLの中で行ったトークショー“NEUTALK(ニュートーク)”は、これからもシリーズのイベントとしてやっていく予定です。 NEUTで取り上げた人同士でトークしてもらうことで、新しい出会いから何かが生まれたり、少しずつ壁をとかしていくことができるかなと」(平山氏)
そんなコミュニティを可視化するために平山氏が力をいれているのは、ステッカーやマーチャンダイジング。イラストレーターmokaが描いたキャッチーなイモリ(英語でイモリはニュートという)のステッカーを取材先やイベント、コミュニティの人々に配って、Instagramなどで発信している。またイベントでは、オリジナルのピンやバンダナなどを販売した。そのひとつとして、sitateruで作ったのは「靴下」。 「ボウリングと靴下って相性がいいかなと思って。あと、グッズとして靴下ってあんまり見ないから珍しくていいなと思いました。オールドスクールな丈とロゴがポイントです。グッズは今後もいろいろ作っていきたいと思っています」(平山氏) リニューアルを機に挑戦を増やしているNEUTチーム。今後も、様々なイベントや企業とのコラボレーションなども考えているそうだ。 「いろんなメディアの人と話す機会もあるけれど、みんな悩んでいることは似ている気がします。メディアの本質を突き詰めることと、経済性を保つこととの両立です。つまり、クリエイティビティとプロダクティビティのバランスですよね。NEUTは、これまで培ってきたコミュニティを編んでいけるからこそ、提案できることを考えてきたい」(平山氏)