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「メルカリ」で売れる額を見れば高い服でも買える

メルカリがフリマの普及によって生み出した消費行動がある。「メルカリで売ることを考えて買う」というものだ。これまで使うか捨てるしかなかったところに「使わなければ売ればいい」という選択肢を普及させたのは他でもないメルカリの功績だろう。

メルカリといえば、2019年の現在、利用者数は約月間1300万人の国内最大のフリマ企業。2013年の創業からたった5年で国民の多くが利用するサービスに成長したということが、日本における二次流通の大衆化を如実に表している。

普段からユーザーインタビューや顧客インサイトを研究するメルカリの南坊泰司シニアマーケティングディレクターによれば、特にファッション分野での消費行動において、具体的にいくつかの変化が起きているという。

(「2019年度『フリマアプリ利用者と非利用者の消費行動』に関する意識調査」より)

(「2019年度『フリマアプリ利用者と非利用者の消費行動』に関する意識調査」より)

『メルカリ』での販売を見越して高いものを購入したり、これまで着たことのなかった洋服に気軽にチャレンジしてみる利用者が増えています。たとえば、これまで3万円の洋服を買っていた人が、5万円の洋服と出会った時に、もしも『メルカリ』で2万円で売れると分かれば、結果的に同じ収支で憧れの服を買えると考えることもできる。買い物へのハードルが下がっていると言えます」(南坊泰司/メルカリ シニアマーケティングディレクター)

実際に今年4月の調査では「利用者の3割が、メルカリがあるからこそ新品商品の購入も上がった」というデータもある。メルカリの存在は、ファッション業界にとって少なからずプラスの影響を与えているということだ。

消費サイクルが速くなっても着られる出番が増える

しかし「買って着なくなったら売る」という消費行動は、消費サイクルを加速させているような印象もある。「ものを永く使うことがサステナブルだ」という考え方もあるが、この点について南坊氏はどう考えているのだろうか。

メルカリ シニアマーケティングディレクター 南坊泰司

服目線で考えると、個人あたりの“所有時間”が短くなっても、二次流通によっていろんな人に着られる出番が増えるなら、それはサステナブルな一面とも捉えられるのではないでしょうか。同じ服の生産量で“ファッションを楽しむ総量”は増えているのです」(南坊氏)

二次流通のポジティブな影響は、商品企画や生産など川上にまで現れ始めている。

「市場で売れるということが、モノの価値があるという裏付けになります。二次流通ではやはりブランドのストーリーがあったり、価値が伝わりやすい商品が売れる傾向にあります。消費者にそういった視点があるのならば、服をつくる側も、本当に価値のあるものを作るようになっていくでしょう」(南坊氏)

メルカリにとって、サステナビリティは事業そのもの

サステナビリティという言葉はどこか“慈善活動”のような印象を与えるのも事実だが、「サステナビリティは事業であるべきだ」と南坊氏は強調する。

「私たちは、捨てられるはずのものが循環するというメルカリの事業そのものが広がることで、サステナブルな消費が広がっていくという考え方をしています。慈善活動のように、何かを無理にやらなければという状況自体がサステナブルではない。事業が進行することで自然と無駄が減っていくような世界にメルカリは貢献できると考えている」(南坊氏)

一方で、事業としてフリマを普及する上でのハードルがあることも事実だ。南坊氏いわくそれは「中古品に対する許容性」だという。

年代別中古品に対する抵抗性

他国と比べても新品を好む傾向が強い日本においては、中古品に抵抗があると感じる人も多く、そういった人々の意識改革が今後のメルカリ拡大の鍵を握っていそうだ。

しかし、若年層だけでなく、幅広い年齢の消費者の間で、少しずつ中古品に対する意識が変容してきていると南坊氏は感じている。20〜30代が中心だったメルカリ利用者は、いまシニアも含めた全世代に広がっている。

世代別中古品を購入する機会の割合

特に60代以上にとってメルカリは、「お金を得るため」だけでなく、「終活」や「生前整理」、また同じ趣味を持つ仲間を見つけるコミュニティ的な活用の仕方もされてきているようだ。

メルカリが牽引するこれからの消費文化

メルカリが二次流通を一般化した理由として、南坊氏は「手触り感のあるサービスだからだと思う」と話す。売り先の見えない買取販売のリサイクルショップなどとは異なり、顔は見えなくともユーザー同士のコミュニケーションが存在する。実際に発送時に手書きのメモを添えたり、アプリ上で感謝のコメントをするのもよくあることで、まさに対面でのフリーマーケットをデジタル化したものだと言える。

メルカリ シニアマーケティングディレクター 南坊氏

「たとえば、自分にとって思い入れのある本だとしても、リサイクルショップに持っていくと1冊10円などと値付けをされて、悲しい気持ちなった経験はありませんか。フリマアプリであれば、自分が売りたい価格で思いを込めて出品をして、値切られても納得できなければ売らないという選択肢もある」(南坊氏)

また、これまでなかった市場にまで二次流通を生み出しているということはメルカリの大きな功績の一つだ。中古品のイメージが強い洋服だけでなく、これまで販路のなかった商品の二次流通はメルカリがあってこそ生まれた市場と言われている。モノを大切にするという日本古来の考え方も、メルカリの普及に一役買っていることは間違いない。

メルカリの意義は、意外な掘り出し物に出合えたり、つながりが生まれたりというワクワクするサービスであること。しかも二次流通によってモノが増えなくても、全体の“価値の総量”は増えるんです。楽しく消費をすることで、結果としてサステナブルな社会を創造していきたいですね」(南坊氏)

二次流通について語る南坊氏

売れることを見据えて憧れの服が買える喜び、売ることを考えて大切に着る慈しみ、売る人とのコミュニケーションで少し嬉しくなる気持ち、別の人がまたそれを着て得られる楽しみ、売ったお金でまた好きな服を楽しめる自由ーー。

単に「捨てられるモノが減る」だけでなく、このように、全体のモノの総量に対して「人々のプラスの感情=価値の総量」が何倍にもなるという意味で、サステナブルな消費のサイクルを生み出したメルカリ。最近、梱包材リユース「メルカリエコパック」の取り組みなども始まった。今後も、日本の消費文化を楽しくサステナブルな方向へ牽引していくだろう。

参考資料
2019年度「フリマアプリ利用者と非利用者の消費行動」に関する意識調査(株式会社メルカリ)
https://about.mercari.com/press/news/article/20190425_consumersurvey/

調査時期 :2019年4月3日(水)~5日(金)
調査方法 :インターネット調査
調査対象 :全国、20~69歳、男女1,000名
     (フリマアプリ利用者500名、フリマアプリ非利用者500名)