「播州織」とはなにか

東経135度・北緯35度の交差点があることから、「日本のへそ」と呼ばれる兵庫県西脇市。
「播州織」は、この西脇市を中心とした地域で生産される綿織物のことを指し、その大きな特徴は「先染め」だ。
生地を織ってから染めるのではなく、糸の段階で多様な色に染めておく。これを織って生地にすることで、無限の表現を実現することができるのだ。
この特徴を活かして、「播州織」は主にシャツの生地として使用されている。

「播州織」は江戸時代中期に、宮大工の飛田安兵衛(ひだやすべえ)が京都の西陣から織機の技術を持ち帰ったことが起源だとされている。
また、この地域は加古川・杉原川・野間川の水域であり、これらの水は染色に適した軟水であるという地理的な利点があった。
こういった背景で、この地域では「播州織」の生産が栄え、現在もその伝統を紡ぎつづけている。

杉原川

西脇を流れる杉原川

特集する4社について

今回特集するメーカーは、tamaki niime Shop & Lab(有限会社玉木新雌)・東播染工株式会社・植山織物株式会社・大城戸織布の4社。

一般的な播州織の製造工程は、「デザイン」・「糸の染色(先染め)」・「サイジング(糊付け)」・「織布」・「加工」だ。

こういった工程の中で、今回特集する4社はそれぞれが異なる部分で個性や哲学を反映し、「先染めの播州織」ならではの無限の表現を世に届けている。

以下の全4回を公開しています。

第1回:tamaki niime Shop & Lab(有限会社玉木新雌)

すべてのプロダクトがイッテンモノ。自然との共生を追求する「tamaki niime」の哲学

玉木新雌

第2回:東播染工株式会社

信頼が自由なデザインを生む。東播染工が誇る「一貫の工程」に迫る

東播染工

第3回:植山織物株式会社

「古き良き」を世界に発信。植山織物が目指すモノづくりとは

植山織物

第4回:大城戸織布

媚びない姿勢で日本のファッションに「ありえない」生地を。『大城戸織布』の哲学に迫る

大城戸織布

株式会社糸編 宮浦 晋哉氏について

糸編宮浦晋哉

「株式会社糸編」代表の宮浦 晋哉氏

最後に、今回i/MAG編集部がタッグを組んで取材を行った宮浦氏について紹介する。

宮浦氏は、千葉県松戸市の出身。古着の街である柏の影響を受け、高校時代にファッションに興味を持った。高校卒業後は理系の大学とのダブルスクールでエスモード東京校の夜間部に通い、2年後に杉野服飾大学に編入した。
大学卒業後はLondon College of Fashionに留学し、ロンドンでファッションメディアやファッションキュレーションについて学んだ。
宮浦氏はこの留学期間に、日本産のテキスタイルがヨーロッパで大きく評価されている事実を知り、強烈に日本の産地に興味を持ったということだ。

ロンドンからの帰国後、宮浦氏は日本のテキスタイル産地に足繁く通い、深いネットワークを広げるに至った。
このネットワークを活かし、現在ではブランドと生地メーカーのマッチングや、生地産地に興味を持ってもらうための「産地の学校」の運営など、「株式会社糸編」を通じて継続的に行っている。

彼を突き動かすのはロンドン留学時に得た日本人としての強い意識と、世界的に競争力のある国産テキスタイルの火を消すまいとする強い想いだ。

宮浦氏は今回特集する播州地区にも累計40回以上足を運んでいる。宮浦氏の深い知見とi/MAG編集部独自の目線をクロスさせ、播州地区の魅力を発信する予定だ。

今後公開予定の4つの取材記事に、是非ご期待いただきたい。