価値観の共有によるコラボレーション
10月でブランド立ち上げから1周年を迎えたONFAdd。10月19〜26日にはDesignartにあわせ、津村氏とのコラボレーションによるカプセルコレクションを発表する。
ファッションと建築、デザイン、アートなどさまざまなジャンルを超えたモノ作りで、衣服の概念を更新し続けている津村氏。ファッションと建築を超えた”FINAL HOME”は、「もし、災害や戦争、失業などで家をなくしてしまったとき、ファッションデザイナーである私はどんな服を提案できるか」という問いから生まれた都市型サバイバルウェアで、家と衣服の境界を融解させた津村氏の代表作だ。ここに”Unleashed habit.(解放された習慣)”という共通する価値観を見出したONFAddがコラボを打診、快諾をもらったという。
今回のコレクションでは、”LUXURESY(ラグジャージー)”という独自開発した素材を使用し、sitateruを通して生地加工・縫製を行い、メンズ、ウィメンズのウエアやバッグなど合わせて10型を制作した。
「今後も価値観を共有するクリエイターとジャンルを越えたコラボレーションをやっていきたいです。アウトプットは必ずしもプロダクトに固執する必要もないと思っています」(ビジネスデザイナー 樋口直也氏)
ONFAddの歩み
ONFAddの始まりは、NEWPEACE代表の高木が、自身の使いたいラップトップ専用のバッグを作るという企画だった。プロダクト制作を通して、共通の価値観を持つデザイナー、パタンナー、メーカーなどを巻き込み、次第に規模を膨らませ、2017年10月に正式にローンチした。
「僕は初めプロダクトデザイナーとしてブランドに参画したのですが、組織というよりは、様々なクリエイターや工場・メーカーが関わって、試行錯誤を積み重ねて試作品を作り続ける場所でした」(クリエイティブ・ディレクター 早川和彦氏)
その後、ONFAddは雨から靴を守るためのフットウエア「RAIN SOCKS」や、布団とバッグが融合した「PORTABLE SLEEPING BAG」など、既成のカテゴリーを“越境”した新しい概念の商品を数々生み出していく。試作品を合わせると、すでにプロダクトは100SKUを超えるそうだ。
「RAIN SOCKS」は、今年初めにグローバルクラウドファンディングサイト「Kickstarter」で世界中の約550人から200万円超を集めることに成功。
最近では、「RAIN SOCKS LITE」のatmosコラボレーションが、グローバルメンズオンライメディア「HIGHSNOBIETY」のインスタグラムで紹介されるなど、世界中のスニーカーヘッズの間で話題になっている。今年10月には、池尻大橋にショールーム兼スタジオをオープン。様々なクリエイターが出入りし、開発・実験ができるようにして、成長を加速するフェーズへ入った。当初想定していた海外進出も順調で、ECとポップアップショップを掛け合わせながら、欧米やアジアに展開を広げている。
イノベーティブな開発を支えるのは、“非効率的”なチームと生産体制
実験的な制作活動を支えているのは、縦割りではないフラットなチーム体制だ。クリエイティブ・ディレクターがブランドの決定権を持つようなことはなく、不特定多数のクリエイターが主体的にアイデアを出し、様々な専門性を持った工場やサプライヤーと共に試行錯誤しながら、プロダクトに落とし込んでいくコミュニティーのような形をとる。
ONFAddのメンバーは、所属を問わず、共通の価値観を持ったクリエイターによって形成されている。デザイナー、パタンナー、メーカーなど、多岐にわたる職能のメンバーがフラットに参加している。想像していないようなアイデアや、通常の工場体制では難しいクオリティのプロダクトを制作することができる。
sitateruもそのコミュニティーの一員だが、デザイナーとサプライヤー側の人間がともに意見を出し合いながら開発を進めていく。誰かが統制をとる方が効率的ではあるが、この環境・このメンバーでしかできないものを作り出すことに主眼を置いているのだ。
「中心のないアノニマスな組織だからこそ、もの作りのプロセスにも、アイテムにも余白が生まれます。ただ、その分ここでは常に予測できないことがよく起こります。組織を自発的にどうまとめるべきか、何を発表するべきか、という議論は重要です」(早川氏)
また、生産体制もONFAddの特徴である。従来のアパレルブランドはシーズンごとに予算を決め、テーマや型数にしたがって生産をすることが多い。一方ONFAddは、実験的な企画に合わせたスケジュールで進行したり、プロダクト毎に異なるクリエイターと協業したりという、ものづくりの進め方をとる。 ある意味“非効率的”とも考えられるが、実験的な活動をすることがONFAddの大きな価値であり、これまでにない実験ベースの生産体制を探っていくことには大きな意味があるだろう。その生産体制は着実に整ってきているようだ。
「既存のアパレルの仕組みはとても効率的にできているんだなと、ブランドを始めて感じました。だからこそ、既存のアパレル業界の効率的な部分を取り入れたり、工場とのやりとりを効率化するなどして、少しずつ仕組みが整ってきました」(早川氏)
ONFAddとは何か
最初はアイデアをプロダクトに落とし込むラボ的な要素が強かったONFAddだが、ブランドの成長にともなってファンが増え、次第にONFAddの世界観に共感する人たちに似合うであろうアイデアを生み出すことが増えたという。 現在のONFAddを定義するならば、一体何なのだろうか。メンバーの間でも「ONFAdd」について考えていることは少しずつ異なっており、共通の見解はない。
「クリエイターがターゲットなので、100人のクリエイターの集団があれば、その中の1人が100人のためにプロダクトを生み出し、みんなが買う。そんなコミュニティーを想定していました。僕にとってのONFAddは“活動のブランド”。こうした実験的な活動自体がブランドで、常に変化するのです」(早川氏)
「僕は“レーベル”のような捉え方もできると思います。いろんなアーティストが集まって、自分たちが表現したいもの作る。その構造はレーベル的とも言えるのではないか。誰かが上からこれを作ろうというのではなく、クリエイターが各々ONFAddらしさを解釈してアウトプットを出していく、それがONFAdd全体を作っていくのだと思います」(樋口氏)
ONFAdd x poweredby.tokyo – ‘Modern Nomad’ from poweredby.tokyo on Vimeo.