ブランド立ち上げまで3ヶ月「片っ端から声をかけた」
インフルエンサーのブランドプロデュース支援を、いち早く始めたマークドバイ。現在は、「DAME FRANK」を含め、計11のインフルエンサーブランドをプロデュースしている。もともとは、Instagramを中心としたマーケティングサービスを提供する企業の、新規部署として事業構想をしていた。
「新規事業を考えるときに、インスタグラマーのマネジメントはすでに多くの会社が参入していたので、私たちは違うことをしようと。インスタグラマーは、その人の『ライフスタイル』にファンがついているんですね。だから、PR案件も普段のライフスタイルにマッチしていないと、いいねが減ってしまったり、フォローを外してしまうということもある」(村田さん)
むしろ、そのライフスタイルを体現するモノをつくることでマネタイズしたら、ユーザーにも、インフルエンサーにもいい体験を生み出すのでは、とブランド事業を始めることになったそうだ。そんな形で事業構想が固まりだしたのが、2017年12月。そこから、2018SSに間に合わせることが決まり、急ピッチでブランド立ち上げの準備がスタートした。
「やろうと決まってから3ヶ月くらいしかなかったので、どうしよう状態でしたね。ファッションは好きでしたが、アパレルのことは全く素人。まずは、自分のInstagramでフォローしている中から、ファッションコーディネートにファンがついている方をピックアップしていって。その中でも『そのデニムって品番なんですか?』などといった服についてのコメントが多く、それに丁寧に返信している方に、片っ端からお声がけしました。個人のアカウントからDMを送ったので、かなり怪しかったでしょうね(笑)」(村田さん)
その中で、返信をくれたひとりが、yukoさんだった。yukoさんは、Instagramで発信していた子供服のスタイリングで人気に火が付き、その後2年ほど前から自身のスタイリングアカウントを始めた。シンプルでありながらハンサムで、少し買い足せば真似できそうなコーディネートがファンの心を掴んでいた。
「DMいただいたときは、もちろん警戒しましたよ(笑)でも、会って話してみたらメリットしかなかった。私なんかがブランドを立ち上げられるの?と不安な部分もありながら、ありがたいチャンスだと思って、やってみることにしました」(yukoさん)
売れる理由が3つ以上浮かばないものはつくらない
ブランドのコンセプトは、ブランドマネージャーがインフルエンサーと一緒に決めていく。まず、ヒアリングシートを渡し、並べられた多数の形容詞から好きなものを選んだり、お気に入りのブランドなどの質問に答えてもらう。それを元にマネージャーがコンセプトやブランド名を提案し、やり取りしながら修正をしていった。
「『DAME FRANK』は”素直な女性”という意味。yukoさんは、みんなと違う個性的なファッションが好きで裏原系など様々なスタイルを通ってきて、最終シンプルに行き着いた。だからこそ、ベーシックなスタイルを素直に楽しむ、そんなコンセプトを軸として展開することにしました」(村田さん)
アイテムは、インフルエンサーブランドならではの、ファンに寄り添った服作りにこだわっている。ライブ配信を使って制作中のサンプルを見せてファンからアンケートを取ることもある。試着ができないECでも買いやすい価格帯を意識している。
「売れる理由が3つ以上浮かばないものはつくらないって決めています。ママが子供と公園で着れるかなど、着ていくシチュエーションを意識しています。あとは、ライブ配信の反応で、在庫積む枚数を決めたりしていますね。もちろんECの顧客データでの分析もしています」(村田さん)
あのときDMを返してもらっていなかったら…
まだブランドが立ち上がって約1年だが、3月には、銀座三越でのポップアップイベントの出展も決まっている。ファンの特徴としては、定着率が高く、リピーターが多い。毎シーズンほとんどの商品を買っているような人もいるそうだ。その理由は、yukoさんの丁寧なコミュニケーションが大きいだろう。
「コメントは、着ている服に関しての質問が多いですね。なるべく早めにお返事しています。コーディネートのストーリーやライブ配信などもやっています。今年は、もっと動画もチャレンジしていきたい。今、海外のインスタグラマーの間で、TikTokをやっているようなIGTVが流行っているんですよね。あと、やりたいこととしては、デニムブランドとのコラボレーションは絶対やりたいと思っています」(yukoさん)
今回、19SSの撮影の合間を縫ってのインタビューだったが、yukoさんと村田さんを含め、現場は始終和やかな雰囲気だった。それも、二人の信頼関係があってのことだろう。お互いのことを聞くと、yukoさんから意外な言葉がスッと出てきた。
「私にとって、村田さんは”人生を変えてくれた人”です。本当ですよ…!だって、普通にママだった私にブランドをプロデュースさせてくれて。こうして服を作れているのも村田さんのおかげです」(yukoさん)
「それを言うなら、yukoさんこそ、私の人生を変えてくれた人です。もとからyukoさんのファッションが好きで”yuko教”なので…(笑)マーケティングやメディア領域の仕事をしていた私が、こうやって好きだったファッションの仕事を任せてもらえている。あのとき、DMでyukoさんが返事をしてくれていなかったら…今の私はいなかったかもしれません」(村田さん)