これまでにない新しい天然繊維の素材が全国から
2011年からスタートした「HARVEST」。シルク、ウール、リネンなど「天然繊維」を軸としたテキスタイルの展示会だ。西脇、和歌山、愛知、滋賀、京都、米沢、富士吉田などから、特色のあるものづくりをするサプライヤーが集まる。
「ビッグサイトなどでやっていたテキスタイルの展示会にも出展していましたが、年々活気がなくなってきたように感じていました。そこで、有志の人たちを集めて自分たちで生地展やろうということで、全国津々浦々、様々な素材のテキスタイル企業に出向いて説得して回りました」(株式会社パノコトレーディング 三保真吾さん)
出展者がそれぞれの顧客を呼ぶなどして、少しずつ認知を広げ、いまはデザイナーズブランドを中心に、大手アパレルメーカーやメゾンブランドなどのデザイナーや生産・企画の担当者が、毎年、ここでしか見れない素材を見にやってくる。
たとえば、フェイクファーに強い「青野パイル」は、オーガニックコットン100%のフェイクファーや、海洋プラスチックを活用したリサイクルポリエステル、シルクの生糸で作るパイルなど、今までにない、新しい素材を開発している。
また、京都の「村田染工」は、コーヒー、紅茶、ワインの絞りかすから作った染料など、変わった天然染めができる。「森川レース」では、リサイクルナイロンとオーガニックコットンをかけ合わせた、サステナブルなハイブリット新素材を開発している。
「新しいことをやっていく気概のある方々を集めています。また、最近では当然のようにサステナビリティへの取り組みについて聞かれることも多いです」(三保さん)
テキスタイル業界でも具体化され始めたサステナビリティ
パノコトレーディングでは、生地の情報をすべてオープンにする「トレーサビリティ」の取り組みをしている。
生地を購入してもらったブランドの商品タグにつけられる、QRコードが印刷されたカードだ。そのQRコードを読むと、綿の生産地から紡績、機屋、染工所など、生地ができるまでのすべての産地情報が見れるようになっている。Google Mapのプロットもあり、どんな土地なのかも地図で確認することができる。現在は、アパレル、雑貨、インナー系のブランドなど、十数社で利用されている。
「ものの背景にあるストーリーが文脈の中でより重要になってきています。これがブームで終わることなく、当たり前になっていくことが重要。昔から、”エコ”とか”ロハス”とか”エシカル”など、使うワードは変化していますが、内容としてはずっと変わらない。テキスタイルメーカーからは、ようやく具体的なプロダクトとして提案され始めたので、ここ半年から1年くらいかけて実際にそういう製品がどのくらい市場に並ぶのか気になります」(三保さん)
美しいことと倫理的であることは相反しない
各社の取り組みが出始めている流れの中で、「HARVEST」は「ここにいけばサステナブルな素材が見つかる」という立ち位置にしていきたいと語る。
パノコトレーディングは、日本では先駆けてサステナビリティを企業価値に取り込んできた企業として、この先のテキスタイル業界をどう見ているのだろうか
「一回やって儲からなかったからやめましたではなく、信念をもって続けるということが何よりも重要だと思っています。それから、クリエイティビティはやはり大事です。サステナブルならダサくてもいいというのは、甘えだと思います。美しいことと倫理的であることは、相反するものではないですよね。本気なのかどうかというその姿勢から、きっと滲み出るものがあるはずです」(三保さん)
今年のHARVESTは12月4、5日に開催される。様々なアプローチの素材を見たり、全国から集まる素材のプロたちと話すことで、ファッションの本質的なサステナビリティを考えるきっかけになりそうだ。
HARVEST
<開催日程>
12月4日10:00-18:00
12月5日10:00-17:00
<出展社>
・青野パイル(株)
・嵐田絹織(株)
・(株)カゲヤマ
・シタテル(株)
・長尾商事(株)
・(株)パノコトレーディング
・(株)前田源商店
・(株)村田染工
・(有)森川レース
<場所>
オーツーギャラリー
〒150-0013 東京都渋谷区恵比寿1-14-6, B1F
http://www.muro-p.co.jp/o2/