縫製工場の1階を改装した広いスペースを、様々な計測や研究設備を備えた部屋が囲っているという構造だ。2階には縫製工場があり、柔軟性の高いクイックな商品・研究開発が可能となっている。テックラボ部長の中村研二氏に案内をしてもらった。
中央のスペースには、ゴールドウインの創業時からこれまでの歴史的ウエアが時系列に並ぶ、ショールームとなっている。オリンピックで活躍した選手のユニフォームから、有名登山家がエベレストを登ったウエア、そして最後にはスパイバーと共同開発を進めているムーンパーカが飾られている。
「ゴールドウインの創業から、現在まで、そして未来という展示構成になっています。スパイバーとの共同開発も、この拠点でさらに加速させていきたいと思っています」(中村氏)
屋内陸上トラックのような「運動研究室」。モーションキャプチャを使った計測などにより、運動パフォーマンスや動きやすさなどを追求した商品開発などに活かすことができる。
また、「人工気象室」や「人工降雨室」を用いて、山の天気やゲリラ豪雨など、様々な天気を想定したシミュレーションテストを行うことが可能だ。ヒトの生理測定の他、防水・撥水・速乾などの機能性素材の試験に利用される。
「もちろん製品単体での試験もしますが、人間が着て運動をしたときに、どこから雨が浸水するのかなど、実際の着用シーンを想定した動きをしてもらってテストする必要があるんですよ」(中村氏)
また、販売スタッフ研修や実践的なVMD研修を可能にする仮想店舗のスペースも設けている。季節ごとにラインナップを入れ替え、商品に関する知識を得られるようになっている。
「店舗の販売員へVMD研修をすることもあります。逆に、富山で生産や研究開発を行っている社員や工場・サプライヤーの人などに、最終商品を見てもらうことで、技術がどのような形になってお客さんに売れているのかということを実感してもらう場所にもなっています。ものづくりから販売までが、積極的に交わっていくことが大事だと思っています。
そういう意味でも、今後は社内外を含めた様々なプレイヤーの人がここに集まり、新しい価値を生み出していく仕掛けを増やしていきたいですね」(中村氏)
まさに、ものづくりから販売までを一貫して行う同社だからこその強みを活かした場所と言えるだろう。
どの業界でも一般的に、ものづくり現場と実際のマーケットは離れてしまっていることが多い。優れた技術があっても、それが実用と結びつかなかったり、実際のニーズから外れていたりすることもある。
そんな中で、そのどちらもが集うハブのようなテック・ラボは、技術・テクノロジーと実際の生活者ニーズが結びつき、衣服のアップデートが加速する拠点となりそうだ。