10代・20代女性の利用者数No.1の動画メディア『C CHANNEL』。F1層に向けて、ビューティー・ファッション・DIY・エンタメなどの情報を動画で配信する。『C CHANNEL』で動画を投稿する「クリッパー」やインフルエンサー、YouTuberを抱えており、「元美容部員 和田さん。」「ひよん」「テリ」など、マネジメントも行っている。
『C CHANNEL』の一番の特徴は、「縦型動画」と「ハウツー」です。コンテンツとしては、メイク、ネイル、ヘアアレンジ、レシピやDIYなどハウツーが特にが人気があります。写真では伝えきれないディテールや工程が視覚的にキャッチできるのが、動画の魅力であり、強みだと思います。」(宮坂編集長)
読者(視聴者)は、F1層を中心とした若年層が中心。読者ペルソナは、「情報感度の高い女の子」。人より新しいものを知っていたいと自らアグレッシブに情報をキャッチしていく人が多い。『C CHANNEL』ではInstagramやyoutubeなどSNSのフォロワーが多く、そこからの流入がほとんどだ。特にInstagramのフォロワーは、国内で7アカウント合計270万人に上る。
いまや「国境は関係ない」世界のトレンドヒエラルキーの変化
非言語的に視覚で訴えるという動画の強みを活かして、越境コンテンツにはかなり力を入れている。FOODやDIYのアカウントは英語対応。各国のInstagramアカウントもある。越境コンテンツも充実させており、現在10カ国にコンテンツを配信している。インドネシアのInstagramアカウントは、なんとフォロワーが68万人にも上る。
日本のコンテンツを現地の言語に合わせ、展開することもあれば、各国のニーズ合わせたコンテンツを現地で制作することもある。今後は、海外の媒体にもコンテンツ連携していく予定だ。
国境を超えてアジア・世界のF1層からこれだけの共感を得ている理由としては、時代背景もあるかもしれない。これまで、編集者として世界のファッションやビューティーのトレンドを見てきた中で、時代の潮目が大きく変化していると、宮坂編集長は語る。
「これまで、ファッション特にモードの世界は、ずっと欧米がリードしていましたが、それとは別軸に、ストリートではアジアの勢いがものすごいですよね。数年前のNYファッションウィーク中にオープニングセレモニーを訪れたら、キャンペーンでショップのショーウィンドウや装飾がハングルで彩られていた。時代が変わったと実感した瞬間でした。
C CHANNELにおいても、自社のインフルエンサーを含め、特に韓国のファッション、ビューティーは本当に強いです。実際ユーザーの女の子たちに話を聞くと、週末、気軽に洋服やコスメを買いに行く場所が韓国という原宿、渋谷くらいの感覚。そこに国境はない」(宮坂編集長)
暮らし至上主義の時代のファッション
“ファッションヒエラルキーの崩壊”は、日本国内だけを見ても顕著だ。ファッション分野で人気なのは、やはり「プチプラ」。ラグジュアリーより、「明日着ていける」ファッション。自分ごと化できるかどうかがキーになっている。
「3.11以降F1層の女の子たちを含め、日本人のファッションへの意識がすごく変わったと皮膚で感じています。“ファッション至上主義”から、“暮らし至上主義”になった。お金の使い方が大きく変わったと思います。表層的な美しさではなく、大切な人たちとの暮らしを豊かにしたい。その延長線上に洋服がある。かつては頑張ってでもハイブランドを欲しかった若者たちが、身の丈にあったおしゃれや着こなしを楽しむ方向にシフトチェンジしてきた。そういう意味では、心が豊かな時代になったなと感じています」(宮坂編集長)
常にユーザー目線でのコンテンツを作り続ける存在に
毎年恒例の人気企画のひとつが「落ちないリップ選手権」。ひよんちゃんに10種類ほどのリップを塗って、揚げ物を食べるなどした結果、リップの落ち具合を比較してみるという企画だ。リップはドラックストアなどで試しづらいというユーザーの悩みを汲み取っている。
「コンテンツづくりでは、行き過ぎたトレンドではなく、半歩先ゆくトレンドを意識しながら、ユーザーに寄り添ったコンテンツ制作をしています。今やメディアに携わる人でなくとも人動画を作って発信できる時代。そういうう意味では、プロとしてのクオリティを高め、私たちにしか生み出すことのできない、オリジナリティ溢れる優れたコンテンツを生み出せるメディアでありたいです」(宮坂編集長)
編集部の動画ディレクターは、ほとんどが20代。年代のヒエラルキー構造が根強い出版社とは全く違う。だからこそ生み出される企画や、小さなトレンドなどを拾い上げられるという強みがあるという。
「出版社って3,40代のエディターたちがティーン向けにコンテンツを作っているところが殆どだと思います。ですが、C CHANNELの制作現場のディレクターは読者とほぼ同世代。それゆえ、ディレクター本人たちが知りたい、見たい、というところから企画を展開しています。出版社が迷走する中、若者たちが出版のノウハウなく、自由な発想で生み出すZINEがものすごい勢いで台頭しているのを見ていると、もはやこれまでの雑誌やメディアづくりのセオリーは通用しないと実感します。そういう意味で、若い人材のパワーは私たちの強みです」(宮坂編集長)
誰もがコンテンツを発信できる環境が生まれ、ファッションやトレンドの世界的なヒエラルキーが崩壊し、個人の価値観が大きく変化した。そんな時代に、それでもティーンたちが見たい、読みたい、聞きたい思うコンテンツを生み出し続ける。なかばパラドックス的な命題に挑むための鍵は、徹底的なユーザー目線に尽きるのかもしれない。
「今の時代、欲しいものやトレンドが、ものすごく細分化していて、何が正解というのがなくなってきています。それらをいかにすくい上げるかが、エディターとしての手腕だと思います。それを突き詰めて、クリエイティブの質も高め、他にはないメディアへとますますグロースさせたいです」(宮坂編集長)