scenery貸農園事業からグランピング×農業事業への転換

「THE FARM」がグランピング施設として本格的にオープンしたのは2016年。野菜の加工販売事業を長年にわたって行なってきた株式会社和郷により、当初は温泉施設付きの貸農園としてスタートした。その後、コテージやカフェ、BBQ場といった施設を拡大していく中で、次なる一手として着目したのがグランピングだったという。

「グランピングは当時、海外で流行し始めており、先々を見据えると日本でもトレンドになる可能性があったことに加え、もともと行なっていた事業との関連性も高かったことから、ポテンシャルが非常にあると考えました」と運営副部長の荒井陽太さんは説明する。

 

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「THE FARM」運営副部長の荒井陽太さん

そうした考えのもとオープンした「THE FARM」は、「農ある暮らしをすべての人に」というミッションのもと、3種の野菜の収穫体験を宿泊プランに組み込んだり、BBQやカフェでの食事に農園で取れた新鮮な野菜を提供したりといった、農業とグランピングを組み合わせた独自の宿泊体験を提供している。

 

farm_experiencefarm_experience_2「最近は農業とグランピングを組み合わせた他の施設も増えてきてはいますが、野菜が1種類しか収穫できなかったり、収穫した野菜をBBQなどで食べられなかったりといったケースも多々あります。そういった観点では、『THE FARM』は敷地面積の約6割が農園という強みを活かした差別化ができているのかな、と考えています」。

グランピング施設としてオープンして以降は、多くのメディアが取り上げたことなども背景に、客数が大幅に増加。客層も従来は仕事を退職後、農業に興味を持ち始めたリタイア世代が中心だったが、30-40代のファミリー層中心へと大きく変化した。

 

thefarm_animals「特にここ数年はファミリー層の方々が増えています。そうした状況を受けて、温泉施設である『かりんの湯』も4年ほど前にリニューアルしました。もともとは昔ながらの温泉施設、といった出で立ちでしたが、『ふわふわドーム』というお子さんが遊べる施設やサウナの新設と共に、内装を大きく変えました」。

「サウナに関しては、お客様の『サウナに入りたいけれど、子供の面倒も見なければいけない』というお声も踏まえて、サウナの前に『ふわふわドーム』をはじめとするキッズスペースを配置して、サウナに入りながらお子さんの様子を見られるような設計にもしています。施設に限らず、お客様からの声は毎週1回、各部門でチェックする会を設けていて、必要あればすぐにサービスを改善できるような体制にしています」と荒井さんは語る。

コンセプトと快適性を追求した、ツナギ型の寝間着

in-house wear_1サービスや施設のアップデートに加え、宿泊客用の寝間着も刷新した。シタテル社と共同で制作した新たな寝間着は、メンズとレディース、そしてキッズ用のサイズで展開。形に関しては通常ではあまり見られない、ツナギ型のウエアになっている。

「”農ある暮らしをすべての人に”という『THE FARM』のコンセプトを寝間着にも反映したいな、と考えていた中で、”野菜”や”収穫”といった言葉を聞いて多くの人が連想する農作業用のウエアから着想を得ました」と荒井さん。

「ただ、ツナギタイプの寝間着は全身一体型のため、寝るのにやや不適な形でもあります。そうした中で、より快適性を上げるため、生地やボタンの素材からロゴの配置まで、細かい点をシタテルさんと一緒に調整していきました」。

 

in-house wear_2生地は”コットンライク”と呼ばれる、シルクのような肌触りのポリエステル素材を採用し、ボタンも寝返りを打った際の負担を軽減するため、柔らかいシリコン性のものを使用。ロゴは当初、ウエアの中央などへの配置を予定していたが、配置部分が固くなってしまうことを踏まえ、配置やサイズ感を調整し、睡眠時に体に当たりづらいようにしている。

 

cottage「色味も最初は現在と異なり、暗めのグリーンでした。ただ、グリーンのつなぎだと農作業感が強くなり過ぎてしまったため、もう少し万人に受け入れられやすく、かつ外で写真を撮った際などにも違和感が出ないよう、スタッフの意見をヒアリングしつつ、シタテルさんに相談しながら制作を進めていきました。生地などの仕様の調整も含めると複数回サンプルを制作することにはなりましたが、シタテルさんのスピーディな対応もあって、より良い一着ができたのではないかなと思っています」と荒井さんは振り返る。

 

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(左)「THE FARM」スタッフの弓削裕之さん

新しい寝間着は8月から導入を開始しているが、宿泊客からの評判も良いようだ。「THE FARM」スタッフの弓削裕之さんは宿泊客からの反応について「チェックイン時に寝間着のご案内をしていますが、お客様のほぼ全員が寝間着を手に取り、着こなして写真などを撮ってくださっています。また、一部のお客様からは『購入したい』というお声もいただいていますね」と話す。

 

in-house wear_3今後は寝間着の販売やアップデートのほか、スタッフ全体のユニホームの刷新も検討しているという。「現状の寝間着は、女性のお客様を中心に、お手洗いに行く際などに全身一体型だと困る、といったお声もいただいているので、上下が分離できるようなつなぎに改善したいな、と思っていますし、季節に対応できるよう、羽織ものもオリジナルで制作できればと考えています」。

「また、スタッフのユニフォームに関しても、現状はコテージとグランピングのスタッフでもウエアが違いますし、温泉やカフェ、農園でも異なっている状況になっています。受付のスタッフと農園のスタッフで全く同じにすることはできないと思いますが、施設としての統一感が出せるようなユニフォームは検討していきたいなと考えています。これまではベンチャーマインドでお客様に喜んでいただけるようなアイデアを検討・実行することが重要で、企業としての見え方などはあまり気にしてきませんでしたが、今後はユニフォームも含めて、どういった会社なのかや社会的にどのようなことを行なっているのかを表明していく必要が出てくるのではないかと感じています」と荒井さんは今後を見据える。

thefarm社会と地域に貢献するための新たな事業

「THE FARM」はここ数年で、フランチャイズ事業や別荘事業など、事業の多角化も進めている。「フランチャイズ事業は現在、マザー牧場や茨城の植物園などで展開が進んでいますが、農業や林業、酪農業などを活用して地域活性化に貢献できればという思いからスタートしています。先日ローンチした別荘事業に関しても、『THE FARM』がある香取市西田部地区が抱えている過疎化問題を私たちのコンセプトを反映する形で解消できればという思いが根底にあります」。

「『THE FARM』はもともと農業という、自然や環境を相手に事業をしてきた会社ということもあり、宿泊施設のアメニティーをはじめ、環境に配慮した取り組みを行なってきました。新しい事業は、グランピング事業が軌道に乗ったことを受け、今まで行なってきたSDGsの観点を拡張して社会や地域活性化に『THE FARM』らしいアプローチで貢献したいという考えのもとスタートしています」と荒井さん。

 

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「THE FARM」らしさのある、貸し農園のお客様用区画札

今後は農業や「THE FARM」の取り組みに対する認知をより広めるための新たな挑戦を行なっていくという。その一つが、エンタメ領域とのコラボレーションだ。2025年の7月には「THE FARM」の敷地内で音楽フェス「SPROUT FES」を開催。収穫体験と音楽を組み合わせた他、地元の学生バンドが演奏する機会も設けるなど、地域活性化観点の取り組みも盛り込んでいる。

「『SPROUT FES』もただ音楽フェスをやりたかったわけではなく、音楽好きの方にも『THE FARM』や農業のことを知ってもらいたいという思いから開催しています。音楽に限らず、別領域とのコラボレーションにどんどんチャレンジしていきたいと考えています」。

「そうして先々には、現在フランチャイズを含めて関東圏でのみしか存在していない『THE FARM』という施設やブランドを全国、ひいては世界に広げていきたいですね。世界中の人々に”農ある暮らし”を知ってもらいつつ、各地を活性化していくことができればと考えています」。

 

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古くから入浴文化のある日本では、湯上がりに着る湯帷子(ゆかたびら)という衣類があり、それが浴衣につながったと言われている。旅館や温泉で浴衣のまま館内を過ごす習慣は、この延長線上にあるものだろう。
浴衣は、部屋から廊下へ、湯から食事へと、滞在の場面をまたぎながら人をくつろがせてくれる。

THE FARMでも、ツナギ型の寝間着を着て、広い園内を歩き回ることができる。
温泉施設へ行き、農作業をし、収穫した野菜でバーベキューをし、そのままコテージで眠ることも可能だ。
このツナギが点在する体験を一本につないでいる。

実際に袖を通すと、身体が「農作業をする」モードへ切り替わる感覚があった。
いつもの服のままなら「汚れないように」と身構える場面でも、このツナギは自然に身体を動かしてくれる。
夏祭りや花火大会で浴衣を着たときのように、気分のスイッチを押してくれるリラックスウエアなのだと感じた。

そのツナギをまとい、畑に出て土に触れると、なぜか心が落ち着く。
バーベキューや朝食で食べる取れたての野菜はみずみずしく、思わず笑顔がこぼれる。
夜は火を囲み、ゆらめく炎を眺めながら語り合う。

自然のなかで大切な家族や仲間と過ごすTHE FARMの「農ある暮らし」は、かけがえのないものになるだろう。

 

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