お菓子の五感体験をデザインする
彼らが掲げるビジョンは「世界一おもしろいお菓子屋さん」。日本で展開する店舗は、どこも店構えからして、おしゃれで目を引くようなお店だ。店舗ごとにそれぞれ個性的な内装で、スキーマ建築計画やトラフ設計事務所など、有名な建築デザイン事務所がデザインを手がけている。 通常のキャンディーショップやパティスリーと違うのは、お菓子をただ「食べる」ものに留めず、五感で体験できるようにデザインされていることだろう。 キッチンのある店舗では、飴づくりの職人が鮮やかでダイナミックな飴づくりを目の前で披露する。160℃の熱々の飴を手で操り、様々なカラーに色付け、温度による粘度変化を使って成型させていく。そのスピード感のある手さばきは見るものを魅了する。時には職人が作りたての飴をその場で手渡しする。 「見て」「触って」「聞いて」「触って」「食べて」ーPAPABUBBLEにとって、お菓子は五感で楽しむエンターテインメントなのだ。 そのエンターテインメントの案内人を担うのは、ショップのスタッフたちだ。小さい子供からお年を召した方まで老若男女が訪れるPAPABUBBLEでは、スタッフが笑顔で飴の試食を配りながら、お客さんと楽しく話しているのが印象的。新宿店店長の田中茜さんはこう話す。 「とにかく食べてもらいたいんです。見た目が可愛いだけでなく、味も美味しいってことを知ってほしいので。またキッチンのない店舗では、キッチンのある店舗にぜひ飴づくりを見に行ってみてくださいと案内するなど、コミュニケーションを大事にしています」(田中さん)
機能と洗練されたデザインを兼ね備えたラボラトリーウエア
飴づくりのための鉄板や、様々な色や香りの試薬瓶が並ぶ店内は、まるで実験室。そのイメージから、スタッフのワークウエアは白衣に。 「これまでは、あえて全員ばらばらのデザインの白衣を買って着ていたんです。ただ、店舗が増えたこともあり、オリジナルで作って統一したいという話になりました。そこで知ったのがsitateruでした」(田中さん) 白衣のフォルムをベースとしながら、ノーカラーにしたり、七分袖にするなど、PAPABUBBLEらしいデザインにカスタマイズしていった。生地カラーも、汚れが目立ちにくいようライトグレーに。さらに、前たてを比翼仕立てにすることでボタンを隠すことで、より洗練された印象にした。 「GINZA SIX などいわゆるデパ地下にもお店があるので、ラボ感を残しながらも綺麗めで清潔感のあるウエアに仕上げました。ポケットを飴の瓶が入る大きさにしたり、動きやすさを重視した軽い生地を使用するなど、作業性も担保しました。販売のスタッフは女性が多いのですが、可愛い!という声が上がっています。やっぱり統一すると一体感が出ますね」 こだわりは、隠れた部分にもたくさん詰め込まれている。ネームタグは、飴のパッケージのグラフィックをそのまま転写したかのようだ。 「外側からは見えないところにも、PAPABUBBLEらしい遊び心がたっぷりですね」(田中さん) 体験をデザインする店づくりのひとつとして、スタッフのワークウエアまでこだわるPAPABUBBLE。そのひとつひとつにこだわり抜く姿勢によって、「世界一おもしろいお菓子屋さん」として、これからも世界のお菓子好きを楽しませていくのだろう。